不動産投資の節税効果とは

計算機と紙幣、減少する棒グラフによる節税効果を表したイメージ
不動産投資は節税効果が高いと言われますが、どのような税金がどの程度節税されるのでしょうか。その仕組みを理解して、不動産投資の大きなメリットである節税効果について正しく認識しましょう。

所得税・住民税の節税について

なぜ不動産に投資することで所得税・住民税を「節税」することができるのか、その仕組みを具体例を使いながら分かりやすく解説していきます。

 

 

【総合課税制度と損益通算について】

不動産投資で「節税」ができるのは、不動産所得が「総合課税制度」の対象となっているからです。総合課税制度とは、各種の所得金額を合計して所得税額を計算する制度のことをいいます。下記の所得が総合課税制度の対象になります。

 

・利子所得

・配当所得

・不動産所得

・事業所得

・給与所得

・譲渡所得

・一時所得

・雑所得

 

また不動産所得は、所得金額の計算上で損失が出た場合に、「損益通算」ができる所得の対象となっています。このように給与所得と不動産所得は同じ総合課税制度を使って計算されるため、損益通算が可能になります。損益通算とは各種所得金額の計算上生じた損失のうち、一定のものについてのみ、計算する際に他の各種所得の金額から控除することをいいます。これにより課税対象額が少なくなるので、所得税・住民税に対して「節税」効果があるということになります。つまり、不動産所得は、給与所得や事業所得と合算した上で、損失が出た場合、その金額を所得金額から控除できるということです。

 

【減価償却費について】

不動産所得は、「総収入金額-必要経費」で計算することができます。必要経費が大きくなれば、給与所得と損益通算して課税所得を減額することによって、「節税」ができます。この必要経費で最も効果を発揮するのが、「減価償却費」です。まず、建物など長期間で使用し、かつ時間の経過とともに価値が目減りしていく資産を減価償却資産と言います。これらは、購入時に購入金額全額を経費として計上するのではなく、使い続けると思われる期間で費用を振り分けて経費計上ができます。これを減価償却と言い、減価償却できる期間を耐用年数と言います。

 

具体的には、4,700万円のマンションを新築で購入した場合、住宅用マンションの法定耐用年数(※1)は47年なので、「4,700万円÷47年=100万円」と毎年減価償却費として100万円を必要経費として計上することができます(※2)。このように、減価償却費を利用して必要経費を計上することができるため、会計上「節税」につながる場合があるのです。

 

※1税法上定められた減価償却資産の耐用年数のこと。建物の場合、構造や使用目的によって細かく年数が決められている。

※2この場合、減価償却費を期間中毎年同じ金額に配分する「定額法」が適用される。

相続税の節税効果について

TAXをハサミでカットすることで節税を表したイメージ画像

次に不動産投資による相続税の節税効果ですが、まず、不動産は相続時の資産評価額(相続税評価額)が、独自の計算方法により低く算出されるということがあります。仮に1億円を現金で相続した場合は、そのまま1億円が相続税評価額となります。では、不動産ではどうなるでしょうか。以下の事例にて見ていきましょう。

 

【例:賃貸事業用不動産、土地と建物1:1(5,000万円分ずつ)で1億円相続した場合】

〈土地〉

相続財産の課税評価に際して、土地は市街地なら路線価方式で、市街地以外は倍率方式で評価されます。一般的に相続税路線価は時価(地価公示価格)のおよそ8割で評価されます。賃貸経営をしている場合、「貸家建付地」の評価になるため、さらに評価額を減額することが可能になってきます。

 

貸家建付地の評価額は、次の計算式で算出されます。

 

貸家建付地の評価額=自用地とした場合の土地価額-(自用地とした場合の土地価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

 

「自用地とした場合の土地価額」とは、相続税路線価による評価額ということになります。各割合の掛け率は、物件ごとに異なる部分もあるので、一概にはどのくらい減額されるかは言えませんが、仮に借地権割合40%×借家権割合30%×賃貸割合90%減額としてこの事例に当てはめます。2段階で計算してみますと、以下のようになります。

 

(1)土地の相続税評価額(路線価):5,000万円(時価)×80%=4,000万円

(2)貸家建付地の評価額:4,000万円-(4,000万円×40%×30%×90%)=3,568万円

 

このように本事例では、賃貸事業用の土地相続税の評価額は、時価の5,000万円から約29%削減されました。

 

〈建物〉

建物は、相続時には固定資産税評価額によって評価されます。また建物が貸借されている場合、土地と同様にさらに相続税評価額を減額できます。

 

貸家の相続税評価額は、次の計算式で算出されます。

 

貸家の相続税評価額=固定資産税評価額-(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)

 

借家権の価額を評価する場合の借家権割合は、基本的に30%とされています。賃貸割合を90%としてこの事例に当てはめてみると、

 

貸家の相続税評価額:5,000万円-(5,000万円×30%×90%)=3,650万円

 

結果、土地と建物を合わせた相続税評価額は、

 

3,568万円+3,650万円=7,218万円

 

となり、1億円からおよそ28%が減っています。

 

さらに、相続税は、「(相続財産総額-基礎控除額)×相続税率」で計算されます。一方、相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×相続人の数)」という計算式で算出されます。相続財産総額が基礎控除額を上回らなければ、相続税はかからないということになります。つまり、相続税評価額が低くなれば、相続税がかからない、または税額が低くなる可能性が高くなるわけです。このように、不動産投資は相続税の節税対策に有効であることがわかります。

節税効果を期待した不動産投資のリスク

最後に節税効果を期待して不動産投資を行う際に気をつけること、リスクとして知っておくべきことを記します。

 

減価償却費を経費計上することで、節税効果があることは説明しました。しかしこれはあくまでも帳簿上の費用であり、実際の現金支出がないということをきちんと理解しておく必要があります。つまりキャッシュフローとは異なるということです。投資物件を購入するのにローンを利用した場合、毎月ローン返済が発生しますが、経費として計上できるのは利息分だけです。借入元金の返済分に関しては経費になりません。これで何が起こるかというと、返済が進むにつれて利息分が減り、元金返済分が増えることで経費に計上できない現金支出が増えていきます。やがて元金返済額が減価償却額を上回ってしまうと、帳簿上の不動産所得は黒字でもキャッシュフロー上では現金が不足して支払い不能な状態に陥ることになります。

 

この「減価償却額<ローン元金返済額」の状態を「デッドクロス」と言います。デッドクロスの状態が続くと、最悪の場合「黒字倒産」の可能性もあります。デッドクロスを回避するためには、ローン借入額を大きくしない、元金資金が不足しないように内部留保に努めるということが挙げられます。結局はきちんとした事業計画、資金計画と健全経営を推し進めることが最良の策ということになります。途中の回避策としては、ローンの借り換えや繰上げ返済などがあります。

 

不動産投資における節税効果について見てきましたが、結論としては、確かに節税にはつながるものの、それは副次的な産物であり、効果は限定的です。ですからあまり「節税」を意識しすぎず、資産を運用するという事業本来の姿勢で収益を上げることを目標に、不動産投資に取り組んでいくことをおすすめします。

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